原因を知って気持ちに寄り添うのが大切

認知症の予防を考えて

認知症による徘徊のリスクと安全対応

原因を知って気持ちに寄り添うのが大切

社会問題化する徘徊

超高齢社会の現在、高齢者の割合に比例して認知症と診断されている方も多くいます。日常の物忘れや周囲の人が分からなくなるといった症状が主に見られますが、徘徊も認知症における顕著な症状のひとつです。ここでいう徘徊とは、認知症の当事者が屋外もしくは屋内において、自分が今いる場所や自宅の場所、目的や行き先などが分からなくなり、ウロウロと歩き回ったり遠くへ歩いていったりすることを指します。
足腰が丈夫なのは幸いですが、徘徊による事故や怪我の可能性は大いにあるため、家族や関係者にとっては大変な心配です。周囲の人たちがいくら目を離さないように心がけていたとしても、各々の仕事や家事、育児などもあるため四六時中見張っているというのも現実的ではありません。それでも中には、認知症の家族のケアのために自分のキャリアを断って対応する方もいるようです。しかしながら、介護生活はいつまで続くかわかりません。その間、無収入になることや再就職の厳しさを考慮すると家族が介護に専念するのは厳しいでしょう。
では、施設ならば大丈夫なのかというと、そうとも限りません。多忙を極める施設スタッフですから、やはり一日中見張っているわけにもいかず、施設から出て徘徊を繰り返す認知症の方の世話に手をこまねくこともあります。また、何よりも自分の居場所や自宅が分からなくなる認知症本人の心細さは想像に余りあるでしょう。
このように、本人や家族、関係者の生活までも浸潤してしまう徘徊は大きな社会問題として注視されています。

徘徊の原因とリスク

認知症による徘徊の原因は、経験したことを忘れてしまう「記憶障害」、周囲の人や状況・時間・場所が認識できなくなる「見当識障害」、前頭葉や側頭葉の収縮により同じ行動を繰り返す「前頭側頭型認知症」、そのほかストレスや不安から生じます。
また、客観的には意味がないように見える徘徊ですが、本人にとっては何かしら目的がある場合がほとんどです。例えば、会社勤めをしていた人が「仕事に行く」と出かけたり、農業従事者が「畑の様子を見に行く」と家を出たりしたうえでの徘徊といったケースが多くあります。また、屋内であれば、探しものをしていることも考えられるでしょう。つまり、本人にとっては切実な行動である場合が多いのです。
認知症の方は周囲を気にかけたり、注意したりすることが難しいため、徘徊した際に車が走行している道路の真ん中を歩く、遮断器をくぐり線路内に入る、河川の側を歩くといった危険な行動が見られます。夏の炎天下では、脱水症状を起こす恐れもあるため、家族や関係者は早く保護したいと願いますが、行方が分からないことも多く発見が難しいケースもあるようです。仮に警察に保護されたとしても、自分の名前や住所が正確に答えられず、どこの誰なのかを突き止めるのが困難なこともあります。
このように徘徊には、命の危険にまで及ぶリスクが伴うのです。

徘徊に対する対応と安全策

徘徊へ正しく対応するには、次のようなことが大切です。
・怒らない
・無理に止めない
・理由を聞いてあげる
・他のことに気をそらすよう促す
・警察に連絡する
つまり、安全対応を念頭に置きつつも、認知症の方の気持ちに寄り添うことが求められます。
また、日中にラジオ体操や高齢者向けの軽いストレッチをすることも、深夜の徘徊予防につながるでしょう。体を動かすことは脳に良い刺激を与えるだけでなく、ほどよい疲労感で夜ぐっすり眠れる効果が期待できます。
万が一にそなえて、GPSを衣服や靴につける、あるいは首からぶら下げておく、服や持ち物に名前と連絡先を記したカードをつけておくといった対策もおすすめです。
いずれにしても徘徊は、地域住民や警察、関係者の協力を得ることで、危険や心配が軽減されます。社会全体で支え合い、取り組む必要があるでしょう。

認知症の予防を考えませんか?認知症は国民病とも言われるほど、今の日本にとって深刻な問題です。しかし正しい知識と介護技術を身につけることによって進行を遅らせることができるだけでなく、日々の介護を楽にすることもできます。
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